この本の主人公は誰なのか?
それがはっきりするのは、物語もだいぶ後半になってからに感じた。
「下人」と呼ばれるいちばん下っ端の忍者「無門(むもん)」。
彼にかかれば、どんな頑丈な門も、どんな高い壁も、あってないのと同じ、
という、そんな能力と実績から付けられた。
忍者は赤子の時に連れてこられ、厳しい訓練を経て、闇の働きをこなしていくうちに、
人間としての感情・関係性を失っていく。
支配者からの酷使・搾取、盗み・人殺しが通常の仕事。。。
大事な人を失うとなった時に初めて、自分の中で失っていた人間的な性質が目覚めた。
「こんなことに人間の心が傷つかぬはずがない。無門が絶えずへらへらと深刻さを避け、あらゆる物事に対して斜に構え、他人の不幸にさえも小馬鹿にしたように冷笑を向けるのは、自らの心を守るためにはそれが不可欠のことだったからだ。この男は自らの心を欺き続けていた。」(前掲書343頁)
人間的に壊れているなと感じることが自分自身にも、周りの人にもある。
それに気づけることは大事なことかもしれない。
絶えず修正し、バランスを取ることでしか、生きていけないから。
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